« | »

2013.03.29

上陸特別許可案件(12)

上陸特別許可の在留資格認定証明書の例

事案の概要
1) 申請人は、インドネシア国籍の男性Aです。
2) Aは、2005年9月、名古屋博覧会のメンバーとして特定活動6月の在留資格で上陸を許可されましたが、最初から不法残留をして就労するつもりだったようです。
3) 同年12月、後に妻となる日本人女性Bと職場の同僚として出会い、交際を開始しました。交際開始後1年を経過したころから、ABは同居生活を送るようになりました。
4) Bには戸籍上の夫がいましたが、婚姻関係は破綻していました。Bと前夫の間には3児があり、3児の親権者を前夫と指定して、2008年3月に協議離婚が成立しました。ただし、その後も、Bと3児、また、Aと3児の間にも交流がありました。
5) 2008年6月、Aは不法滞在の容疑で警察の摘発を受け、入管に収容されました。Bは、Aの仮放免申請や在留特別許可を求めるなど努力しましたが、待婚期間中でもあり、Bは同年9月に退去強制処分となりました。このとき、入管職員から「上陸拒否5年に該当する、5年間は絶対日本に入れない」と説明され、ABはそれをまともに信じてしまったようです。
6) そこで、Bは、Aの祖国であるインドネシアで暮らす決意を固め、住民票もインドネシアへ転出の届出を提出して、ABによるインドネシアでの生活がスタートしました。
7) 同月(2008年9月)、待婚期間が終わると同時にABはインドネシア式の婚姻を成立させ、翌月には在インドネシア大使館に日本側婚姻報告を提出しています。
8) Bが日本に一時帰国することもありましたが、ABは、婚姻後4年ほどの期間のほとんどをインドネシアで暮らしました。その間、2010年1月には、AB間の長女Cが出生しています。Cは出生によりインドネシア国籍のほか日本国籍も留保しています。
9) Bは、2012年11月、単身で日本に戻り、ABCの3人で日本での生活を再開すべく、準備を開始しました。
10) 当職は、この直後に、Bから依頼を受け、Aの来日許可(上陸特別許可)に向けて事務を開始しました。AB間に実子があること、退去強制後4年を経過していること、退去強制後の期間のほとんどをAB夫婦が同居して暮らしてきたこと、退去強制前にも同居歴があることなど、有利な条件が多く、上陸特別許可案件としては、もっとも平易な部類に入ると思われました。
11) しかし、ネックになるのはBには4年以上も日本の住民票がなく、よって、所得申告もできず、住民税課税証明書や納税証明書を添付することはできません。Bは来日直後からアルバイト的な仕事を開始していたので、在職証明書と給与明細1ヶ月分は添付できる見込みでしたが、ABC揃っての日本での生計に安定性を持たせる方法を考慮しなければなりませんでした。
12) こういった場合の解決法として、以下の3つの方法を考えました。
① Bの預金残高証明書(一家3人なら300万円程度以上が適切)を添付する方法。
② Bの両親などに身元保証人になってもらい、その身元保証人の所得証明書等を添付する方法。
③ Aが来日後に就労するものとして、Aの雇用見込み証明書を添付する方法。
検討の結果、Bの財産状況や親族状況からして①と②は諦めざるをえませんでした(過去において、①②の手法とも在留資格認定(上陸特別許可)を得た経験がありました)。
残る③の方法ですが、これはかなり危険な手法でもありますので、できれば避けたいところです。当然ではありますが、「婚姻したから来日するのではなく就労が目的で来日するのではないか」と入管当局に疑念を掛けられる可能性があるからです(要するに偽装性の疑い)。これに関しては、過去に入国審査官との対話の中で「よほど婚姻信憑性が高い」場合には取りうる手段であることを知っていました。本件が、「よほど婚姻信憑性が高い」事案であることは上記10)のとおりですので、この方法を用いることにしました。
13) 2013年1月下旬、当職取次にて名古屋入国管理局へ在留資格認定証明書交付申請書を提出しました。
同年3月下旬、在留資格認定証明書が交付されました。
在留資格「日本人の配偶者等」、在留期間「1年」。
認定証明書の右肩上には、「5-1-9(ロ)」と朱書きされています。これは、入管法5条1項9号ロ、つまり、5年間の上陸拒否に該当しているということ。そして、上陸拒否期間中でありながら(上陸特別許可を前提とした)在留資格認定証明書であることを意味します。旧法下では「7-1-4」と記載されていたのと同じ趣旨です。
14) AB夫婦が上記5)のとおり、「入管職員に5年間は絶対に来日できない」と言われたことをそのまま信じてしまい、適切な相談相手がなかったことが、Aの来日を大きく遅らせる結果となってしまいました。入管職員の不適切発言など残念な要素のある事案でしたが、インドネシアにおけるAB夫婦とC児の幸福そうな生活ぶりを垣間見ることができ、救われた気持ちにもなる事案でした。
今後の日本での生活により一層の幸福が待っていることを祈念してやみません。

Comment & Trackback

Comments and Trackback are closed.

No comments.