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2011.03.25

最近の在留特別許可(3)

◇ 覚せい剤取締法違反 ◇
(1) 当職取扱い以前の履歴
 20歳代のタイ国籍女性です。
 在留資格認定証明書の交付を受けて、2006年6月に、日本人の配偶者等(1年)で上陸許可を受けました。その後、更新を重ね、2008年6月から在留期間3年を付与され、在留期限は2011年6月でした。
 在留期間3年を得た後、日本人夫と別居し、スナック勤めを始めました。
 動機は、本国に残してきた実子への送金額を増やしたい等とのことでした。
 スナック勤めから覚せい剤を覚え、2009年5月、覚せい剤取締法違反で懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けました。判決確定により入管法24条4号チに規定する退去強制事由に該当することになります。ですが、この時点で、自動的に在留資格を喪失するわけではありません。判決とは別途に退去強制手続が行われます。
執行猶予付き判決を受けたので、身柄は釈放されました(この時点で不法残留になっていると法廷から入管へ収容されます)。本人は、日本人夫の家に戻って生活を再開しました。
(2) 当職への依頼
 この段階で、当職に、在留特別許可の依頼がありました。
 事案の概要を把握するために、刑事事件の記録(司法警察員面前調書や起訴状、判決謄本など)を精査するところから調査に入りました。
そして、「逮捕前に別居に至っていた。夫と離婚して別の男性と結婚したい」旨の書かれた調書が、入管にも回っている前提で書類を作成することにしました。
刑事事件は大きな問題ですが、入管としては婚姻関係の破綻の程度が判断基準になるので、別居等はかなりの難点でした。
(3) 入管への出頭
 上記のとおり、在留資格・在留期間は残ったままの状態で、2009年6月中旬に入管へ出頭しました。
 この場合、自ら出頭しないでいると、どうなったのでしょうか?
 ・退去強制手続開始のため、入管から呼び出されるか。
 ・次の更新時期に更新不許可、退去強制手続になるか。
 どの手順でやっても、退去強制手続になるわけですが、結果から見ると、速やかに自分から出頭したことが功を奏したものと思われます。
(4) 事案の進行
① 2010年8月、自宅調査、写真撮影等が行われました。入管がいきなり自宅に乗り込んできて、パチパチ写真を撮ってゆくパターンは、危ないながらも許可見込みのある案件であると考えられるのは、上記にも記したとおりです。
② 同月下旬に入管から呼出しがあり、ロングのインタビュー(ほぼ丸1日)が行われました。担当したのは入国警備官と思われます。これも、危ないけれど許可見込みがあるときに、行われると考えています。
③ その約2ヵ月後の10月下旬に入管から呼出しがあり、保証金30万円を積んだうえ、仮放免許可を申請”させられ”ました。そういう当局の指示があったのです。
 (同日、フィリピン人永住者で覚せい剤事犯の人も同じ措置を取られたそうです。)
 仮放免許可を与えられ、第1回目の出頭確認日として、2ヵ月後の12月下旬の日付を指定されました。
④ 12月上旬に、ほぼ半日の日程で「入国審査官による違反審査」というインタビューがありました。
⑤ 2011年1月下旬、特別審理官による口頭審理が行われました。
(5) 在留特別許可
 2011年2月上旬の出頭確認日に、在留特別許可の裁決がありました。
(6) 若干の感想
 在留特別許可が認められるか、退去強制処分になるか。本件ほどその落差の激しい事案はありません。
退去強制処分になった場合、
① 入管法第5条第1項5号により、薬物系犯罪による前科で長期上陸拒否事由該当
② 入管法第5条第1項4号により、1年以上の懲役を受けた者として長期上陸拒否事由該当
③ 入管法第5条第1項9号ロにより、5年間の上陸拒否事由該当
 以上3つの上陸拒否事由に該当することになり、なお、夫婦間に実子もないので、事実上、日本に再来日することは、ほとんど生涯不可能であったと思われます。
 まさに生死を分けるに等しい在留特別許可であったと言えます。
(7) 再入国許可について
 類似情報を収集した結果も踏まえると、執行猶予期間中は、再入国許可は認められていない模様です。
 一般論として、長期上陸拒否事由該当の場合、生涯において上陸拒否者ですが、執行猶予期間が満了すると上陸特別許可が出ることがあります。
 それと同じ理屈で、再入国も上陸の形態の1つなので、執行猶予期間中は「上陸」に当たる再入国許可は出せないということのようです。ただし、人道上やむを得ない事由があるときは、執行猶予期間中でも再入国許可を認めることもあるようです。

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