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2011.06.01

短期滞在の更新(レアケース)

1 短期滞在の更新  -原則-
 在留資格「短期滞在」は在留期間15日、30日、90日の3種類の期間が決められています。他の在留資格と同様に更新許可申請を行うことも可能ですが、法務省の下記サイトにあるとおり、
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/ZAIRYU_KOSHIN/zairyu_koshin10_17.html
 —上記サイトから引用—
外国人の方が,疾病等の理由により,短期滞在の期限を延長する場合
※ 「短期滞在」の更新申請については,原則として,人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に許可が認められるものです。
 —引用終了—
 来日した外国人自身の病気か、そうでなければ、滞在先(来日した外国人の実子宅など)に幼児(未就学児)があり、その監護の必要がある場合などに限定されているのが一般的です。
 なお、在留期間更新許可申請書は、下記サイトに掲載されています。
http://www.moj.go.jp/ONLINE/IMMIGRATION/16-3-1.html

2 人道的事由によらない短期滞在の更新
 上記のように病気や幼児監護など人道的事由によらないで、短期滞在の更新が許可されうるのか、今まで実例を聞いたことがありませんでした。
 今回、当職が処理したのは次のような事案でした。
(1) 2011年4月、都内にある輸入商社から、以下のような相談がありました。
 風力発電所の部品を修理するために、同部品を製造した中国のメーカーの技術者7名が短期滞在30日の在留資格で来日することになった。
 来日前の予定では2基の部品を修理するはずであったが、来日して検品してみると、それ以外に6基、合計8基の修理を要することが判明した。
 30日間ではとても8基全部の修理を完了することはできない。
 こういった理由によって、短期滞在の期間更新を依頼したい。
(2) 最初に考えたのは、短期滞在の資格によって「修理」という外見的に労働に類する活動を行うことが許されるのかどうかです。この点に関しては、給与・報酬が日本側から支出されないことが条件になります。後に、入管当局にも確認したところですが、中国人技術者(以下、「申請人」と書きます)は、中国企業の社員であり、同社から給与が支払われるということであれば問題ありません。名目を問わず、実質的に報酬と判断される金銭が、日本企業から中国企業へ、中国企業から申請人らに支給されるのであれば、不法就労ということになろうと思います。
 また、この修理を行うことになったのは、中国企業が製造した部品の初期不良に原因があり、かつ、製品の保障期間内であることにも留意しました。自然災害や使用法の過誤による破損・故障であれば、買い取った日本側で修理費を負担すべきものと思われるからです。
 本件は、初期不良による「クレーム処理」としての修理だったのです。
(3) 短期滞在の在留期間は、90日、30日、15日と3つの期間が規定されています。
 更新期間については、上陸時点で許可された滞在期間(現在では領事館の定めた期間と同じ)が90日の場合、仮に更新が許可されるとすれば、90日、30日、15日の更新いずれか1回を認めるのが通例です。
 上陸時点で30日の場合、仮に更新が許可されるとすれば、30日、15日の更新いずれか1回を認めるのが通例です。
 上陸時点で15日の場合、仮に更新が許可されるとすれば、15日の更新を1回認められるのみです。
(4) これに対する依頼人の希望は、以下のようなことでした。
 a. 上陸許可30日に対して、合計90日の滞在を認めるよう申請してほしいとの申し出でした。 →しかし、これですと、30日の更新を2回行うことになり、これも大変例外的な希望であると思われました。
 b. 申請人らは急ピッチで修理作業を進めているので、自ら入管に出頭することなく取次申請によって申請して欲しい。 →短期滞在の更新においては、本人同行することが多いのですが、この点に関しては、下記(5)のとおり、入管当局の了解を得られました。
 c. 申請人らが入管への出頭を求められた場合に備えて、出張所への申請を希望するとのことでした。 →しかし、この点に関しては、こういった超レアな事案は本局申請に限ると考えました。また、依頼者の指定する出張所には管轄権がないと判断されました。
(5) 本件は、通常申請されるような人道的事由によらない更新許可申請です。
 また、希望する更新期間が、上陸時点で付与された期間より長い、例外的な長期間です。
 人道的事由による更新の場合、入管当局が申請人自身の状況を聴取することが多いため、本人同行することが通例なのに対し(帰国の誓約書に本人の署名を求められることもあります)、申請人らが出頭しないで取次申請するというのもあまり多くない例だと言えます。
 この事案について、4月下旬の来日から1週間を経過した時点で、以下の主張をもって、東京入管本局へ事前打合せに赴きました(事前打合せがこの時期になったのは、(1)のとおり、修理・検品を開始したところ、全部で8基の修理の必要性が判明したためです)。
申請人側の主張として、
① 原発事故による電力不足の補充という国益に沿う活動であること。
② 間もなく到来する夏季には大幅な電力不足が予想され、それを補充する意味を持つ緊急性があること。
③ 大震災と放射能汚染のために中国当局が日本渡航自粛の指示を出し、来日日程が1ヶ月も遅れてしまったこと。入管法の原則どおり、いったん帰国して再来日していたのでは、上記のように夏季の電力不足対策に間に合わなくなること。
 この事前打合せには大きな意味がありました。
 入管当局は、当初、「来日時の30日に加えて更新30日を認めた後は、いったん帰国する以外にない。」と原則論を述べていましたが、上記①ないし③の主張をしたところ、上席の審査官から「上陸許可時点で30日の短期滞在に加え、90日の更新を最大限検討する」と約束してもらうことができました(氏名を名乗った上、申請時には直接自分を呼び出すよう指示してくれました)。
 また、行政書士による取次申請に関しても、問題ないとの言質を得ることが出来ました(ある意味では当然ですが、人道的事由による場合は本人聴取も重要であることは否めません)。
(6) 提出資料等に関してですが、まずは、領事館へ提出した招聘理由書などを送付してもらい、依頼内容と合致しているかどうかの確認作業を行いました。
 更新許可申請書関係は、一般的な内容以外に、上記①ないし③の事情を理由書に記載するほか、風力発電所の故障に関する具体的な状況説明、日中双方の発電機に関するパンフレット、作業現場や申請人らの作業状況の写真、現場地図なども添付しました。
 また、この風力発電機は、F重工業が組立て、H製作所に納品しています。よって、F重工業もしくはH製作所といった著名な上場企業から理由書などを交付してもらい、入管の信用度を高めるのも1つの方策でした。
 そして、行政書士業務としては、何といっても、行政書士自身が作業現場を現実に見に行くこと。申請人らと面談し、申請書と偽りのない人物が、偽りのない場所で、偽りのない活動をしていることを確認すること。
 これが要点であると言えます。
(7) 5月中旬に、短期滞在90日の更新を求める申請書を東京入管(本局)短期滞在部門に提出し、即決で、90日の更新を認められました。
 これにより、合計の滞在期間は120日となりました。
 これ以前の例ですと、短期滞在の更新が許可された場合、許可証印の下に「今回限り」もしくは「FINAL EXTENSION」とスタンプされていましたが、本件ではそのスタンプが見当たりません(理由は不明です)。
 
 当職としては、このような滅多にない事案を担当させていただき、関係各位に深く感謝しております。
 風力発電機が快調に電力を作り続けることを祈っております。

(2011.6.7追記)本件許可と直接の関連性があるかどうかはともかく、
 午後10時から放送されたテレビ朝日系列の報道ステーション(メインキャスター古舘伊知郎氏)の中で、本件の風力発電所が報道されていました。
 洋上風力・地熱発電の可能性として、「茨城県神栖市の海岸に国内初となる本格的な洋上風力発電所があり、現在、7基の風車が稼働している」として、『ウインド・パワー・いばらき』の模様が映し出されていました。
http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/news/detail.php?news_id=20750 (報道ステーションのサイト)
http://www.komatsuzaki.co.jp/windpower/kamisu.html (風力発電所のサイト)
 この業務が、国益の一助となる感慨を持ちました。