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2019.08.25

日本人の実子

1、在留資格「日本人の配偶者等」は、日本人の配偶者(妻または夫)を意味する事例が多いのですが、この「日本人の配偶者等」には、日本人の実子(日本人の子として出生した者を言います。帰化人の子にして出生のときに親(帰化人)が日本国籍者でなかった場合は別です)や特別養子も含まれます。
本稿では、日本人の配偶者等のうち、日本人の実子を取り上げます。
2、国籍法第11条1項に「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」という規定があります。日本人が自分の希望で外国に帰化すると、自動的に日本国籍が無くなる、という意味です。この規定を知らない人が多々あり、国外に居住する日本人向けに、在外公館がWEB上で盛んにこの条文を紹介しているようです。この規定によって、日本国籍を喪失する方々には、社会的地位の高い人、高学歴者や学者、ノーベル賞受賞者なども多々含まれています。
3、本稿で取り上げる方も、ご自身の意志で北米の国籍を取得したため、上記の条文により、日本国籍を喪失されました。在アメリカ合衆国日本国大使館のサイトを下記に紹介しますが、
https://www.us.emb-japan.go.jp/j/kokuseki/k_soushitsu.html
この規定により、日本国籍を喪失したことを知ったときから、3ヶ月以内に、国籍喪失届を提出するように案内されています。遅滞すると、過料の対象にもなります。
国籍喪失届を提出しますと、戸籍が消除され「除籍」となります。
なお、事案により、他国に帰化後(すなわち日本国籍喪失後)、戸籍の変動(婚姻、離婚、子の出生等)がありますと、戸籍訂正許可の家事審判(行政書士業務外)を経て、戸籍簿を、本来あるべき姿に直す必要が生じる場合があります。
4、本件のご相談者は、北米の国籍を取得され、まだ、国籍喪失届を提出されていなかったので、すみやかに、国籍喪失届を管轄の領事館に提出することをお勧めしました。一般に、在外公館に戸籍届を提出しますと、戸籍簿に届出内容が反映されるまで、2~3ヶ月を要します。
5、本件のご相談者は、母上が東京入管の管内にお住まいであることがわかりましたので、母上を申請代理人とし(入管法7条の2第2項、規則別表4)、母上のご住所を連絡先として、東京入管に在留資格認定証明書交付申請(在留資格:日本人の配偶者等)をなすことにしました。日本人の配偶者等の在留資格は、英語で Spouse or Child of Japanese National であり、日本人の実子と特別養子も同在留資格に該当します。なお、本稿では、ご本人が(普通)養子である場合については触れません。
6、本件の問題点は、ご相談者が、北米の国に帰化したとしても、日本国籍が自動喪失になるという上記の条文をご存じなかったことにあります。かつては、在米弁護士がWEBで、日本人がアメリカに帰化した場合は重国籍になる、と誤った情報を喧伝していたこともありました。
このような状況下で、ご相談者は、他国に帰化後、日本パスポートで数回来日してしまった事実があります。この事実は、不法入国として入管法に抵触し、場合によっては旅券法にも違反することがあります。こういった不法入国の履歴等も、正直に入管当局に伝えるべきです。なんとなれば、入管当局が、日本人としてあるいは外国人として、来日した履歴を全部把握していると考えるべきだからです。このご相談者の場合は、日本パスポート以外に外国パスポートでも来日されていますから、個人識別情報の提供(指紋や虹彩)のデータも把握されています。
外国に帰化後に日本パスポートで来日していた事実は絶対に隠してはいけません。また、私ども入管申請取次者としてのコンプライアンスにも関わる問題です。
7、上記のほか、日本での生計維持等の状況も立証し、在留資格認定証明書交付申請書を東京入管へ提出したところ、1ヶ月未満で認定交付されました。
8、同様に、日本人の実子が北米の国に帰化し、かつ、日本パスポートで来日してしまっているとのご相談もありました。こちらは、ご本人がまだ小さいお子さんです。親御さんが、上記の国籍法の条文をご存じなかったのです。このケースでは、不法入国者として、在留特別許可を求める以外に良い方法がなく、広島入管に出頭していただき、無事、在留特別許可を得ておられます。
ただし、外国に帰化後、在留特別許可までの間は、不法滞在者となりますので、その間の公的扶助等はすべて返還するように求められたそうです。
9、このように、突然「あなたは日本人ではありません」と言われた方には、相当なショックがあるでしょう。こういったご相談件数は決して少なくなく、しかし、途中で放置してしまわれるようなケースも散見されます。
解決策は必ずありますから、怖がらずに一度、ご相談ください。