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2013.11.04

いわゆる離婚定住案件(前科のある事例)

申請人は、栃木県に居住する40歳代前半のパキスタン国籍の男性です。
栃木県行政書士会業務第4グループ(国際部)が主催する相談会においでになったご依頼人です。
困難案件であると同時に、行政書士会の相談会が実を結んだ案件でもありました。

来日後の概略は次のとおりです。
・1999年11月、技能(1年)の在留資格で上陸許可。その後、更新許可。
・2002年5月、日本人女性と婚姻。
・同年8月、日本人の配偶者等(1年)に変更許可。
・2003年3月、第1子出生。
・同年8月、日本人の配偶者等(3年)の更新許可。
・2006年2月、第2子出生。
・同年8月、日本人の配偶者等(3年)の更新許可。
・2009年1月、妻に対する暴力事件を起こす。同時に、妻及び2児と別居。
・2009年8月、日本人の配偶者等(1年)の更新許可。
・同年10月、懲役数ヶ月・執行猶予3年の有罪判決を受ける。
・このころから、夫婦関係調整調停事件、離婚訴訟事件、子との面会交流調停事件が係属。
・2010年9月、日本人の配偶者等(1年)の更新許可。
・2011年10月、日本人の配偶者等(1年)の更新許可。
・2012年11月、日本人の配偶者等(6月)の更新許可。
・2013年6月、短期滞在(90日)に変更許可。
・同月、栃木県行政書士会主催の相談会で当職と面談。
・2013年8月、離婚に関する控訴審判決。離婚を認め、2児の親権者を母と指定。これにより、事実上、離婚が確定。
・2013年8月、定住者への変更許可申請(当職取次、東京入管本局)。
・同年10月、定住者(1年)に変更許可。

理由書の骨子
① 来日以来、13年以上が経過しており、在留履歴が長いこと。
 在留履歴が長いと、定住者の在留資格が認められやすくなります。
② 前妻との同居を伴った婚姻生活が、7年近くあったこと。
 実体を伴った婚姻生活の長さは、離婚定住案件において、大きな要素になります。
③ 定住者の在留資格を得られれば、現在、短期滞在のために休職している従前の職業に戻ることができ、生活の安定性があること。
 生計の安定性も、定住者の在留資格を認める要素になります。
④ 執行猶予付き有罪判決を受けたが、既に執行猶予期間が満了し、事件以降は、粗暴な振る舞いや違法な行為をしていないこと。
 現在の素行善良も1つの要素になると考えられます。
⑤ 家庭裁判所の家事調停(面会交流)で決められた内容を履行するには、日本に留まる必要があること。
 裁判内容の実行は、大きな要素になると考えました。
⑥ 在留資格が短期滞在(90日)へ変更になったとき、入管の担当者から、裁判が終わったら、定住者への変更が申請できると説明されたこと。

寸評
何が決定的な理由となって許可されたのか、一口で説明するのは難しいところがありますが、
私が検討した内容として、法務省の下記サイトにある
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00057.html
「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例及び認められなかった事例について
のうち、
 2 「定住者」への在留資格変更許可が認められなかった事例
の1行目にある事案と本件は類似性があるため、十分に検討対象としました。
① (類似点) 申請人が男性であって、日本人の前妻があり、前配偶者との間に実子があって、かつ、その子を前妻が養育することになった点は、不許可事例も本件も同様です。
② (本邦在留期間) しかし、不許可事例では、本邦在留期間が4年10か月であるのに対し、本件では13年以上と格段に長くなっています。
③ (婚姻期間) また、不許可事例では、婚姻期間が3年とあるのに対し、本件では同居を伴った婚姻期間が7年近くあり、かつ、婚姻期間だけでいうと11年に及びます。
④ (面会交流調停の存在) 重要なのは、本件では、面会交流調停が成立していて、父子交流を続けるためには本邦への在留継続の必要性があると考えられる点です。
⑤ (前科の点) 更に、不許可事例では、消極要素として「詐欺及び傷害の罪により有罪判決」とある点が挙げられます。刑期は明記されていませんが、「詐欺及び傷害の罪」ですと、仮に執行猶予付き判決であっても、宣告された懲役刑は1年以上であったと推測できます。つまり、その場合は、長期上陸拒否事由(入管法第5条1項4号)に該当しますので、入管としては在留を認めがたかったでしょう。
 それに対して、本件では、宣告された懲役刑は月単位であって長期上陸拒否事由には該当しないし、また、執行猶予期間も満了していて、事件後は善良な社会生活を送っていたことも大きな要因であったと考えています。

2013.03.15

定住者への変更許可案件(いわゆる離婚定住)

本稿では、日本人の配偶者等の在留資格で在留していて、離婚後に定住者の在留資格への変更を許可された事例等について掲載してみます。

1. 同一配偶者間で2回の婚姻離婚の経緯を経た事案

(1) 本件申請に至るまでの経緯 -1回目の結婚生活-
① 当事者は、外国人男性Aと日本人女性Bの夫婦です。夫Aと妻Bは、2006年2月に1回目の婚姻をしました。
② Aには、本国での仕事(自動車関係輸出入業)があり、結婚後もすぐには同居生活に入りませんでした。 
③ Aは、婚姻成立後の2006年3月と7月に短期滞在の資格で来日し、合計70日余りをBと共に暮らしました。
④ 短期滞在中に、AB間の長男Cが出生しています。
⑤ Aは、2007年1月には、日本人の配偶者等(3年)の在留資格で上陸を許可されています(在留期限2010年1月)。
⑥ AB夫婦の日本での居住地は、Bの実家であり、Bの両親との同居生活でした。AB夫婦はもともと仲は悪くなかったのですが、“しゅうと”との関係が、夫婦関係に亀裂を生んだようでした。
⑦ 2008年8月、ABは協議離婚をし、Aが別居する形で1回目の結婚生活に終焉を迎えました(1回目の婚姻期間は約2年半、同居期間は約1年半)。

(2) 本件申請に至るまでの経緯 -2回目の結婚生活-
① ABは、2009年12月に2回目の婚姻届を提出しました。
② 上記のとおり、“しゅうと”との関係が問題でしたので、Bも実家を出て、ABCだけで生活するようになりました。
③ 2010年1月には、在留期間(1年)に短縮されて更新許可されました。
④ 2010年10月には、二男Dが出生しました。
⑤ しかし、2011年11月には、「本国に軸足を置いた生活」=(Bの主張)、「両親の支配から抜けきれない生活」=(Aの主張)という意見の対立を生み、結果、CDの親権者をBと指定して、再び、協議離婚を届け出ました(2回目の婚姻期間及び2回目の婚姻中の同居期間は、共に約1年11ヶ月)。BCDは、Bの父母宅の隣家で生活を開始しました。
⑥ なお、在留期間更新に関しては、2011年11月の離婚直前に更新許可(1年)を得ていました。在留期限は2013年1月中旬でした(ここまで当職は一切取扱いなし)。

(3) 本件申請に至るまでの経緯 -離婚後の交流-
① 離婚しても、AB元夫婦とACDという父子は離れ離れになってしまったわけではありませんでした。
② Aが、BCDという元妻と子供たちに頻繁に会いに行き、ABCDの4人で公園や動物園で遊んだり、AがCDの幼稚園行事や誕生祝いに参加したり、AからBにプレゼントを渡したり、BがAにA本国での買い物(美容品等)を依頼したり、外面から見て4人で一家と受け取れる生活部分も存在し、それを裏付ける写真などもありました。
③ また、離婚の前後を通じて、AからBへ生活費や養育費の授受記録が残されていました。
④ ABが3度目の再縁をするのではないかと思わせる言動もありました。

(4) 申請方針
離婚が成立し、就労系在留資格への変更の可能性は、模索する余地がありませんでした。
Aが在留を希望する以上、定住者への変更許可申請を行う以外にありません。
しかし、2回の離婚と同居期間、子の親権を考慮すると、厳しい審査を予想せざるを得ませんでした。
そこで、許可へのアプローチの仕方として2つの可能性を模索しました。
① 日本人の実子を扶養する外国人親に定住者の在留資格を付与する旨の平成8年7月30日付け「定住通達」があります。当サイト内では下記に載せてあります。外国人親が子の親権者となり、日本において相当期間、子を現実に監護養育していることが要件になります(本件ではその要件がありません)。
http://www.yshimada.com/yybbsplus/yybbs.cgi?mode=new_html&no=9
そして、平成14年4月26日付け東京地裁判決(確定)は、定住通達を一歩踏み込んだ解釈をしたと評価されています。同判決にいうところでは、定住通達は、「子が安定した生活を営めるようにする」「幼い子と外国人親との関係が人道上十分な配慮を必要とする」ために外国人親に定住者の在留資格を付与するという趣旨である。だから、仮に外国人親に親権がなく現実に監護養育していなくても、定住告示や定住通達に定められた事由と同視すべきような特別の事情が認められるときは、定住者としての在留を認めるべきだ、と解釈できます。つまり、外国人親と子の間に深い交流があるときは、定住通達に該当する場合と同視すべきだという趣旨だと理解しました。
本件の場合、親権もなく手元で養育しているわけでもありませんが、平成14年判決の趣旨に近い親子の交流があったといえるのではないか、ということです。
② 日本人の配偶者等の在留資格で在留していて離婚したが、「実体を伴った婚姻生活が3年以上ある場合には、定住者の在留資格を付与する」との入管内規があるらしいという角度の高い情報がありました(その他、独立生計要件などの要件が必要です)。
この点、入管職員のマニュアルである入国在留審査要領を開示請求すると、黒塗りになって出てくる(非開示)箇所なのですが、実務の情報を収集すると「実体を伴った婚姻生活3年以上」で間違いないようです(最低ライン)。
③ 以上、定住通達を拡大解釈した平成14年判決に近い親子の交流がある点。2回の結婚期間を合計した年数。この2点を柱とし、それを裏付ける証拠を添付して、2013年1月上旬、定住者への在留資格変更許可申請をなしました(東京入管宇都宮出張所扱い、当職取次)。

(5) 追加書類の要求
申請後7週間を経過した2013年2月下旬になってから、追加書類の提出要求が来ました。
内容は、
1) 給与明細書(直近から3-4か月分)
2) 婚姻をしていた期間での同居をしていた日数の詳細
ということでした。
まず、1)に関しては、前妻Bや子CDとの生活の基盤が東京都内にあり、住民税課税証明書、同納税証明書の発行地も都内となっています。それに対して、申請時点でのAの住居地は茨城県であり、在職証明書も同様に茨城県の会社から発行されています。申請の段階で法務省所定の住民税課税証明書、同納税証明書は添付しましたが、在職証明書の所在地と納税証明書等の発行地に相違があることから、入管としては、在職証明書にあるとおり本当に茨城県内の会社で就労しているのかどうか、生計の安定性があるのかどうか、確認したかったのだろうと思います。これに関しては、給与明細書を8か月分ほど(つまり茨城県の会社に就職して以来、直近のものまで)と平成24年度源泉徴収票を提出しました。
次に、2)に関しては、結婚離婚を繰り返し、同居期間が明瞭ではないので、その点の詳細説明書を提出して欲しいというのが入管の指示でした(書面のほかに電話でも追加の指示を受けていました)。
よって、婚姻日、同居日、同居期間、別居日、離婚日を一覧にして提出しました。

(6) 審査結果
追加書類を提出して1週間経過する前に葉書を受領しました(指定の受領期間は特例期間の満了日になっていました)。
在留カードの受領に出向いたのはその数日後の2013年3月初旬です。
ここで、入国審査官から説明がありました(こういう細かい心配りが宇都宮出張所の良いところでもあります)。
・親権がないこと(マイナス要素)
・子供への送金を続けているなど、交流があることが認められること(プラス要素)。なお、今後とも、このような金銭的扶助、交流を継続してほしいとのご指導をいただきました。
・婚姻中で、かつ、同居していた期間を合計すると、何とか3年に達すること。
(この点は、入国在留審査要領の非開示箇所ですが、従前からの推測である「実体を伴った婚姻生活3年以上」を口頭で説明してくれたことになります)。
以上によって、ギリギリ何とか許可という結果になりました、との説明を受けました。
許可内容 定住者、在留期間1年。

(7) 若干の感想
本件に関しては、定住者への変更許可申請を行う以外に手立てがありませんでした。
そして、当初、口頭でこの相談を受けた段階では、ごく普通に、「日本人の配偶者等1年、更新1年、更新3年で、離婚した。実子はあるが親権はない。父子交流はある。」と推測し、そうであれば、婚姻期間は5年程度になるので、許可見込みがあるものと思って受任したわけです。
ところが、面談し、パスポートを点検して、上記のような2回の婚姻、離婚の繰り返しをした事案だと確認し、暗澹たる思いになったものです。
しかし、平成8年定住通達を類推・拡大解釈した平成14年判決を知っていましたから、金銭扶助を含めた父子交流に望みを掛けた申請でした。実際に、当職も、Aと面談約束をしながら、AがBCDの元へ飛んでいってしまったという場面に遭遇しました。
入管の判断は、上記のとおり、「金銭的扶助と父子交流」「前妻との婚姻中の同居期間3年以上」という、いわば“合わせ技”によって与えられた許可でした。
今後とも、申請人Aには、子CDに対する養育費扶助などの交流を継続するように良く伝え、事務完結となりました。

2. いわゆる離婚定住案件のうち比較的ノーマルな事案

(1) 本件申請に至るまでの経緯 –来日してからの履歴-
① 外国人女性Aは、1990年11月に短期滞在90日の在留資格で上陸し、そのまま不法残留、不法就労していました。主な就労先は、観光旅館でした。
② Aは、2002年9月、日本人男性Bと旅館業勤務の同僚として出会いました。Bの仕事は調理師でした。
③ 2005年1月、ABはBの住居にて同居を開始し、同年6月に婚姻届を提出しました。AB間には実子も連れ子もありません。
④ 2005年12月、Aは、在留特別許可により日本人の配偶者等(1年)の在留資格を付与されました。
⑤ Aは、在留特別許可の直後から、住居に近い場所にある旅館に仲居として勤務するようになりました。これは、夫Bが、過疎化する同地では調理師として雇用してもらえなくなり、慣れない土木関係の仕事に就いたものの収入が安定しなかったからです。しかし、Bの生活力の低さは改善されず、やがてAの収入で家計を支えてゆかざるを得なくなってゆきました。
⑥ 2011年9月、Aは、Bと別居し、勤務先の寮で生活するようになりました。別居時点での在留資格は、日本人の配偶者等(3年)でした。
⑦ AとBは、同居開始から別居まで6年半余、婚姻から別居まで6年3ヶ月ほど、在留特別許可から別居まで5年10ヶ月ほどになります。
⑧ 2011年12月、Aは、夫婦関係の修復もしくは別居継続を検討するとの理由で、日本人の配偶者等の更新許可(1年)を得ました。
⑨ 2012年7月下旬、AとBは、協議離婚届を提出するに至りました。
離婚時点での在留資格は、日本人の配偶者等(1年)でした。
ABの婚姻期間自体は7年余でした。

(2) 申請方針
① 本件も、就労系への在留資格変更は可能性がなく、定住者への変更許可を申請する以外に考えられませんでした。
② ごく一般的な書類のほか、理由書、親族概要を添付しています。
③ 理由書には、
・上記のような来日後の経緯と夫Bとの婚姻、別居、離婚のいきさつ
・来日後22年を経過し、また、本国には頼れる親族ないし知人友人や資産等がないこと(親族概要との関連性)
・本国での就労経験がなく日本以外での就労・自活が困難であること
・現在の勤務先や職種に慣れていて、相応の勤続年数と収入もあり、身元保証人は勤務先の女将であって、今後とも公私にわたって保証してくれること
概ね、上記のような趣旨を記載しました。
④ 以上のような申請方針をもって、2012年11月上旬、定住者への在留資格変更許可申請をなしました(東京入管本局扱い、当職取次)。

(3) 審査結果
申請後、入管からは特段の連絡はなく、この当時の標準処理期間である3週間程度で許可されました。
許可内容 定住者、在留期間1年。

(4) 若干の感想
前記の案件と比較して、子の監護や福祉に関する事情は存在しません。
いわゆる離婚定住が認められるための婚姻期間や同居期間に関する参考になれば幸甚です。

3. 婚姻継続中に定住者への在留資格変更が許可された事案

日本人夫Aと外国人妻Bの夫婦が、4年間別居し、なお、1年以上前から夫婦関係調整調停事件(いわゆる離婚調停)が係属しています。まだ、離婚は成立していません。
Bは、2012年12月中旬、日本人の配偶者等(1年)の在留資格から定住者への在留資格許可申請をなしたところ、申請後、約2週間で許可されました(東京入管宇都宮出張所扱い、当職取次)。
許可内容 定住者、在留期間6月
(現時点での詳述は避けます。形骸的な婚姻継続中でも、定住者への変更許可はありうるという程度の記事に留めることにします。)